亡くなったときは公的年金が遺族を守ってくれることを知る

投稿日:2019年6月15日 更新日:

死亡

亡くなったときの遺族の生活保障として、遺族給付という公的保障があります。亡くなった方が、公的年金制度の加入者であった場合もしくは年金受給者であった場合が条件となります。

亡くなった方が加入していた年金制度と遺族によって、受けられる遺族年金は異なります。平成27年(2015)年10月以降は、共済年金が厚生年金に統合されましたので、大きく2つの種類に分けられます。国民年金の「遺族基礎年金」と、厚生年金の「遺族厚生年金」です。

職業や収入、家族構成などによってその額や支給期間は異なりますが、まずは子どもがいる家庭で大黒柱が亡くなった場合の遺族年金について解説していきます。

遺族基礎年金は、「子」がいる場合に支給される年金

遺族基礎年金」は、個人事業主など国民年金の第1号被保険者または老齢基礎年金を受けている人が亡くなった場合で、一定の要件を満たしているときに、遺族が受け取れます。

支給要件としては、保険料納付済期間と保険料免除期間が加入期間の3分の2以上あることですが、平成38(2026)年4月1日前の場合は、前々月までの過去1年間に保険料未納がなければ支給されます。

受給できる遺族の範囲は、亡くなった人によって生計を維持されていた「子のある配偶者」と「子」に限定されています。つまり、「子」がいる場合に支給される年金です。

ここでいう「子」というのは、

  • 18歳になって最初の3月31日までの子

または

  • 20歳未満で障害等級1級または2級に該当する子、でかつ現に婚姻していない

です。

平成26(2014)年4月実施の法改正前は、「子のある妻」であったため、父子家庭(妻が死亡)になった場合には支給されませんでした。しかし、性別で差をつけることは不合理だということで、法律が改正され、平成26(2014)年4月実施以降に父子家庭(妻が死亡)の場合にも支給されるようになったのです。

いずれにしろ、生計を維持の原則要件としては、厚生労働大臣の定める金額(年間850万円)以上の収入又は年額655万5千円以上の所得を将来にわたって得られないと認められることです。

年金額については、国民年金の加入年数等にかかわりなく、子の人数で決まります。

遺族厚生年金は、主に会社員や公務員の配偶者に支給される年金

遺族厚生年金」は、会社員など第2号被保険者または老齢厚生年金を受けている人が亡くなった場合だけでなく、厚生年金の被保険者資格を失った後、被保険者だったときの初診日から5年以内に亡くなった人や、障害等級1級または2級の障害厚生年金の受給者が亡くなった場合で、一定の要件を満たしているときは、遺族は「遺族基礎年金」に「遺族厚生年金」を上乗せして受け取ることができます。

「遺族基礎年金」が対象でない方でも、「遺族厚生年金」のみ受け取ることもできるのです。

受給できる遺族の範囲は、亡くなった人によって生計を維持されていた配偶者と子、配偶者と子がいなければ父母、父母もいない場合には孫そして祖父母と、遺族基礎年金よりかなり範囲が広くなっています

ただし、子のいない30歳未満の妻の場合は、5年間しか受け取ることができません。若い世代の妻は、自分自身で収入を得たりして今後の人生を立て直していくことができるという考え方に基づいているのです。

年金額については、厚生年金の加入年数と加入期間中の報酬の額を元に計算されます。被保険者期間が短いと年金額が少なくなってしまうので、それを避けるために、加入期間が300ヵ月より短くても年金額は300ヵ月で計算することになっています

子どもの数に応じて子の加算はありません。

また、公務員が加入していた共済年金は、平成27(2015)年10月に統合されました。公務員の遺族が受け取る遺族共済年金は職域年金相当分の3/4が加算されるため、遺族厚生年金よりおよそ2割程度年金額が多くなっていましたが、統合後も年金払い退職給付に名称を変更して存続しています。

表にまとめると、以下のようになります。

一定の遺族には、「中高齢寡婦加算」や「経過的寡婦加算」といったさらにプラスαの加算あり

なお、一定の遺族には「中高齢寡婦加算」や「経過的寡婦加算」があります。

中高齢寡婦加算

会社員など第2号被保険者である夫が亡くなった場合で、一定の要件を満たしているときは、「遺族厚生年金」に一定額が加算されます。 受給できる遺族の範囲は、死亡当時40歳以上65歳未満の子のない妻、子があっても40歳以上65歳未満で遺族基礎年金を受け取ることができない妻です。

子が18歳になると、遺族基礎年金が打ち切られるため、年金額が急な減少します。この分を補うのが「中高齢寡婦加算」です。 年金額(平成28年度価格)は、585,100円(遺族基礎年金の3/4相当額)です。

経過的寡婦加算

妻が65歳になると、自分の老齢基礎年金を受けられるので、「中高齢寡婦加算」が打ち切りになります。その年金が減少する分を補うための制度として、妻の生年月日(昭和31年4月1日以前)に応じた「経過的寡婦加算」が受けられます。

また、「遺族基礎年金」を受給することができない場合には、死亡一時金寡婦年金を受け取ることができる制度があります。この場合、選択の上いずれか一方の受け取りとなります。

死亡一時金は、36ヶ月以上180ヶ月未満で12万円を下限に、420ヶ月以上で32万円が最高額となります。

寡婦年金は、国民年金の第1号被保険者であった夫が亡くなったとき、国民年金独自の給付として妻が受け取ります。妻が60歳から65歳になるまでの間受給でき、「夫が受けることができた第1号被保険者期間にかかる老齢基礎年金×3/4」になります。

亡くなったときの公的保障を表にまとめると、以下のようになります。

実際、遺族年金はどのくらいもらえるのでしょうか?支給要件が遺族の年齢や子の有無などによっても異なり、計算が複雑になるため、以下の条件で年金額の目安をまとめてみます。

遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」は、受給できる遺族の範囲が異なり、支給される年金額にも違いがあります。基本的に会社員もしくは公務員の妻は、個人事業主の妻より手厚い遺族年金を受け取ることができます。

一家の今後生活していくために必要な金額である必要保障額を算出する場合、収入見込額として、亡くなった時の公的保障である遺族年金の額について理解しておくことが重要です。
個人事業主の妻は会社員の妻より公的保障が少ないですので、必要保障額を多く用意する必要があります。
遺族年金の知識を身につけておくと、適切な金額での死亡保険(終身保険、定期保険など)の加入につながります。

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